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心の天気

土江正司、TNT、島根、日本

土江正司:心身セラピスト、僧侶、スクールカウンセラー、ヨーガ教師 tsuchies@mable.ne.jp

  我々の心は往々にして晴れたり曇ったりする。だから「今のあなたの心の天気はどうですか。スカッとしているかんじですか。」と問い掛けられれば、人は自動的に胸の辺りに意識を向けて少しの間静かにし、「スカッとはしてないなあ。ちょっと薄ぐもり。もしかしたら雨が降り出しそうかも。」などと答が返ってくる。どんなに感じを得にくい"遠い"人でも晴れか曇りかくらいの差は認識できる。天気は私たちすべてが体験しているものであり,気持ちについて語る上でよい比喩となる。

 気象状況を反映して天気が移り変わるように、心の天気は内的な状況を反映して激しく変化したり、安定していたりする。心の天気とは体験過程の表現であるとも言えそうだ。

 私の共同研究者で小学校教員の伊達山裕子さんは子どもたちに心の天気描画法を日々実践し、彼らの集中力や表現力を養っている。

 

小学校での実践

 小学二年生の担任である裕子は授業開始後の数分を利用して描画法を実践している。角が丸い葉書大の枠が印刷してある小さな用紙(18×13cm)を全員に配ると、子どもたちは神妙に心の天気を観察し始め、5分くらいで描き上げる。勉強のときは抵抗して席に着くことさえしたくない子も心の天気には素直向き合うことができる。描いた絵は各自がファイルして保管する。

 週に3回くらいのペースで4ヶ月間続けた結果、子どもたちの集中力と表現力が高まり、また子どもたちの問題行動が減ってきたように裕子は感じている。また子どもたちは級友との関係や家庭での悩みを彼女によく相談するようになったという。

例をいくつか

 ある男児はなかなか自分の心に触れることができず描けないでいたが、しばらくしてから雷雲と稲妻を描きはじめた。さらにそこに鉛筆を紙にたたきつけるようにして砂嵐を起こした。それを何日か続けた後に絵の中にうっすらとした太陽と黄色い宝箱が描かれた。次の日には宝箱の中身が描かれ、それ以降彼の絵は晴れて明るい感じになった。

 別の男子はよく用紙の表も裏も真っ茶色に塗り潰すのだが、それが彼流の晴れの表現で、よく裕子にその絵を自慢する。

 ある女児は「心の天気」の中に心の木の芽が登場し、それが育って立派な木となり、実がなり、小鳥が巣を作るというように発展した。別な女児の絵には心の友の男女が登場し、仲良くなって、最後には結婚する。子どもたちは「心がスッキリする。毎日続けたい」と大喜びしているという。

 ある女児は心の天気を描く代わりにときどき用紙の中に詩を書いてくれる。一つだけ紹介しよう。

ゆーらゆら。
スースー。
だっこ(おかあしゃん)
ずうーーと、
だっこ(おかあしゃん)

  夏休みが終わり、心の天気のファイルを手にした子どもたちはこう言ったという。「前に書いた絵を見ると、元気が出てくる」  

 以下に子供向けの心の天気描画法マニュアルをご紹介する。

■心の天気描画法マニュアル

<最初の教示>

  心は目に見えないけど、いろんなことを感じて、それを誰かに聞いてもらいたかったり、表現したかったりします。だけど、なかなかうまく言えなかったり、聞いてもらえなかったりするので、心を表現することをあきらめてしまうことがよくあります。するとしまいには、自分が何を感じているのか自分でもわからなくなってしまい、落ち着きがなくなったり、わけもなく不安になったりします。

 今から行う「心の天気」という方法は、心をお天気にたとえてみることで、今の自分の感じをわかりやすく表現する方法です。

 とても気分がいいときは、心の天気は晴れでしょうし、何だか気にかかることがいろいろあるときは、ちょっと曇っていると言えるかも知れません。悲しい雨が降っていることもあるでしょう。すごく腹が立っているときは雷がゴロゴロピカピカしているという表現がぴったりしているかもしれませんね。

 ちょうど空の天気が晴れたり曇ったりするように、心の天気もいろいろ移り変わります。いつも晴れがいいというわけではありません。雨や風が気持ち良い時だってあります。大事なのは、今の自分の心はどんな状態なんだろうかときちんと理解できていることなのです。それではさっそくやって見ましょう。

< ここからは毎回教示>

  いすに深く腰かけて、首や肩の力を抜きます。目をつむって、ふうーっとゆっくり息を吐きましょう。ゆったり呼吸しながら身体の緊張を緩めていきます。

 (30秒ほど待って)いかがですか、だいぶん緊張が緩んだでしょうか*1。それでは今度は胸やお腹の辺りに気持ちを向けてください。そしてこんなふうに自分に問いかけてみてください。「自分の心は今、スカッと晴れ渡っているかなぁ、それともどんより曇っているのかな。」

 (10秒待って)いかがですか、心の天気が見えてきましたでしょうか。天気ではなくて景色が見えたり、ただの色が見えたり、イメージが見えたりしてくるかもしれません。もちろんそれはそれでOKです。見えてきたら用紙の枠の中に色鉛筆やクレヨン、ないときは鉛筆やボールペンでも結構ですから、描いてみてください。なかなか浮かんで来ない人も、用紙と向き合っているときっと何か描けると思います。

  (2〜3分後)描き終わったら、描いたものをもう一度眺めてみて、自分の心をぴったり表現できているかどうか、照らし合わせてみてください。何かが足りないとか、ちょっと違うなと思ったら、描き加えたり直してください。

  (約1分後)終わったら余白や裏に心の天気を描いてみて気づいたことや感想を書いてください。*2

 *1ここでクリアリングスペースを行っても良い。
 *2隣同士やメンバー間でシェアリングをするのもよい。

<終わりに>

 心の天気はフォーカシングのガイドにおいても使うことができる。たとえばフォーカサーが「何だか不安な感じがする」といったときに、「その感じをお天気で表してみてはいかがでしょうか」と提案したり、フォーカシングの終わりの段階でしばらく心の天気を眺めてもらうよう提案する。フォーカシング終了時の心の天気は、フォーカサーに素晴らしい景色を見させてくれることが多い。そして心の天気はただ見つめているだけで次第に晴れて来るものでもある。ちょうど、呼吸を感じようとするとき呼吸が自動的に静まるように。

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