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フォーカシングとスピリチュアルな生活

ジョン・アモデオ(John Amodeo)
(初出「フォーカシング・コネクション」)
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 フォーカシングに携わっている多くの人が、仏教や他のスピリチュアルな方法に深く関心を抱いています。そして、それは不思議のないことです。フォーカシングも仏教も、たった今感じているままに生に向き合うという問題を扱います。どちらも、私たちの瞬間瞬間の体験に興味と思いやりをもつことに関心があります。どちらも、人間の苦悩を減ずる方向に向かいます。感情を回避するのではなく、あるがままに感情に添っています。どちらも、外部の権威者が告げる何が真実か、正しいかに頼るよりも、私たち自身の体験による知恵を信頼することを奨励します。

 仏教や他のスピリチュアルな方法は、しばしば、人間的なことを置き去りにして、日常的な毎日のできごとを越えて私たちを解放する、何かニルバーナ(涅槃)の状態に没入するような、超越への道だと誤解されています。しかし、瞑想の師、ジャック・コーンフィールドが述べているように、喜悦の後に洗濯仕事があるのです。日々の生活があり、感情や要求や欲求がある私たち自身の生活と関係するのと同じように、他者との関係もあります。

 もし、スピリチュアリティが超越にかかわるとしたら、それは私たちの自己愛を超越することでしょう。自己陶酔を超えるとは、私たちのまわりいたるところで花開いている生活と、もっと親密に付き合うという意味です。それは、生の求めに応じられること、他者に私たちの要求を満たしてほしいと思うよりも、他者をそのままで見ることです。

 純粋にスピリチュアルな生活は、私たちが自分自身を超えて進んで行く助けになります。私たちは、他者の経験に興味をもち、自分自身の幸福を追究するのと同じく、他者が幸福になってほしいと願うようになります。私たちは、他者とつながることが可能になります。私たちが出会う人々と、私たちが触れるその人たちの人生と、どのような親密さも安心して応じられることをうれしく思います。私たちは、他者により親切になり、誰も皆同じ人間の部分であることを認識します。

 もし私たちが未解決の感情的な問題で悩んでいたり、あるいは、それらを押しやってしまおうとしているなら、他者に対して寄り添っていることや役に立つことができません。私たちが人々の痛みや怖れやその他の感情を目の当たりにするとき、自分自身のいつまでも癒えない傷が感情的に戻ってくるとしたら、その人たちとともにいることよりも、自分自身の感情的な混迷によって消耗させられるかもしれません。もしパートナーや友だちが私たちといっしょに問題をもっていてくれたら、私たちはそれほど反動的にも防衛的にもならないで彼らの話を聴くことができます。もし私たちがからだの内側で落ち着いているなら、どんなフェルトセンスでも相互交流を通して起こってくるものを抱きかかえていることができるという自信がもてます。もし私たちが個人的な傷や悩みに苦しむならば、私たちは、他者のニーズをはっきりと見ることはできないし、あるいは、他者の世界に楽々と力をそそぐことはできません。

 瞑想をする人の多くは、感情を解き放つとか、感情にとらわれないように扱うことを教えられています。これは、それらを喜んで抱きかかえるのではなく、何か克服すべきものとして見て、私たちの感情の世界に反感を抱くという不幸な結果を招くかもしれません。フォーカシングは、瞑想者が、感情が正念(マインドフルネス)の修行の主要部分だという理解を鋭くする助けになります。私たちは、感情を放つのではなく、あるがままにおいておく必要があります。感情を敵と見るよりも、むしろ、より深まるものへの入り口です。私たちは、自分自身の、あるいは生命自体の、より豊かな手触りに触れます。知恵は、生にかかわる私たちのフェルトセンスにとどまっていることからわき出るのです。

 どのようにして私たちの感情をやさしく親身に抱えているかを学ぶことで、これらの感情は、転換し、開かれ、変容するチャンスを得るのです。私たちが、変化し続ける感情の状態にやさしく付き合っていると、他者に対する共感や思いやりがもっと育ちます。

 私たちが、自分自身といつもの自己偏見との間に少し間(スペース)を見つけられれば、私たちは、より自由に他者の悲しみを抱えていることができます。私たちが、自分自身の感情や問題を親切で安心してやさしく抱えている方法を学ぶにつれて、人々のためによりたやすくそこにいることができるようになります。このように、フォーカシングは、私たちがよりじゅうぶんに深く愛することを助け、より豊かでよりしっかりしたスピリチュアルな生き方へと導いてくれます。

 フォーカシングは、私たちが自分自身に対してより可能性を広げるような練習を通して、より他者に寄り添っていられるよう助けてくれます。この自分自身を抱えているという決定的な能力が、対人関係を愛するための主要な技法であり、真のスピリチュアルな生き方です。自分自身の感情をやさしく、思いやりをこめて抱えていることによって、自分自身の近くにととどまっています。私たちはこころの平静を育てます。私たちは、自分の内側にこの安全な隠れ家を作り上げるとき、共感的に応答したり他者とつながっていることが感情的にもスピリチュアルにも可能になります。

ジョン・アモデオ博士:心理療法家、 The Authentic Heart (信頼できる心)、Love & Betrayal(愛と裏切り)の著者、Being Intimate (親密であること)の共著者。フォーカシング・トレーナー、フォーカシング研究所フォーカシングと仏教プロジェクト・コーディネーター。E-mail : johnamodeo@aol.com
                              (訳: 大澤美枝子)

Last Modified: 18 July 2005

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