TFI Newsletter In Focus   イン・フォーカス               April 2013

まえがき(カイ・ネルソン)

親愛なるフォーカシング・コミュニティのみなさま、
今月のニュースレターは、おおざっぱにフェルトセンスの基本能力というテーマで組まれています。
フェルトセンスの基本能力とは、学ぶために料金を払える人も、なぜかこの機会を断たれた人も含めて、フェルトセンスのレベルにアクセスしようとする人に教える意図で名付けたものです。私達は、生活環境にかかわらず、フェルトセンスのレベルを広く誰にでも可能にしたいのです。TFIのウエブサイトに新しくフェルトセンスの基本能力のセクションを立ち上げたところです。そこには、フェルトセンス能力のヴィジョンを展開している、メアリー・ヘンドリクス・ジェンドリンの論文も出ています。
'felt sense literacy'

今月のニュースレターには、「間(ポーズ)の能力」というサージ・プレンゲルによるエクアドルのウイリアム・ヘルナンデスのインタビューも含まれています。これは、ウイリアムによるフェルトセンス能力へのアプローチです。
数年前、メアリーは「画期的な間(ポーズ)」というパワフルな論文を書いています。revolutionary pause 「間(ポーズ)の能力」は、ウイリアムが見つけた、画期的な間(ポーズ)を教える簡単な方法です。人々はそれぞれの人生/生活の歩みにおいて、短時間でそれを学ぶことができたのです。

「間(ポーズ)の能力」は、さもなければそれにアクセスすることができない人々にフェルトセンス能力を提供する一方法です。まったく異なる方法ですが、子ども達のフォーカシングもまたこの恩恵を提供します。子ども達のフォーカシングが提供するものは、奥が深いと思います。なぜなら、人は、習慣が形成される人生のまさにその時に、フェルトセンスの習慣を形成することができるからです。ルネ・ヴォイゲレスの論文では、一人の子どもがこのレベルにアクセスするのをサポートされる時、私達は最前列にいるのです。

ではまた次号で、
カイ
―カイ・ネルソン、TFI共同ディレクター
(訳:大澤美枝子)

4月号の目次
* 序文(カイ・ネルソン)
* 論文「「僕は本当に何か支えが必要なんだ!」
―フォーカシングのアプローチで子どもの内なる声の表出を促すには― (ルネ・フォーヘラルス)
* ウイリアム・ヘルナンデスとの対話(サージ・プレンゲル)
*今後のイベント
* 特集:ウィークロングのお知らせ ― 異文化間の交流と交差―
* 新しい情報
* リストにご参加ください
* 普遍的なフェルトセンス・リテラシー(読み書き能力)を支援しましょう

 

「僕は本当に何か支えが必要なんだ!」
―フォーカシングのアプローチで子どもの内なる声の表出を促すには―

ルネ・フォーヘラルス

序文
子どものエネルギーを身近に感じて暮らしている人は誰でも、子どもたちの中には、彼らにフェルトセンスのガイダンスを受けやすくして、自分自身の力で成長できるようにする、生きるための奥深い技能があり、彼らを世話する大人たちによってそれを育てることが可能であることを知っています。より多くの大人がこの利点を理解するにつれて、大人たち自身と子どもたちの人生に役立つようになり、この子どもの「自己能力獲得」という考え方は、より広まっていくと思われます。世界中で大人と子どもが互いに支え合うことにより、私たちは、子どもたちが世界に新しい何かをもたらすのに必要な内発的動機付けと支えを得られるようにすることができます。
ここに、「大人」の体験や応答を代用するのではなく、子ども自身の内なる応答を用いて子どもをガイドする一つの具体例を示します。

子どもたちのフォーカシング
「僕は本当に何か支えが必要なんだ!」と大きなため息をつきながらレックスは言いました。13歳の少年との3度目のセッションでのことでした。さて、このように目の前の少年があなたに助けを求めているとき、あなたはこのような個人的な問題に対して、どうしたらよいでしょうか? 彼の両親は離婚しており、彼は自己評価が低く、学習面でも困難を経験しているのです。
まず初めに、私は、ただ彼の言葉を伝え返し、また彼の溜息も同様にそのまま伝え返しました。「あなたの内側には何か本当に支えを必要としているものがあって、あなたは言葉とともに溜息さえ出てしまうほどなのですね。」 彼はより深いため息をついて「そうなんです!」と答えました。私は、彼がこの伝え返しに感動したのを知り、また同じようにこれを伝え返しました。「何かまた内側で感動しているものがあるのですね。」
彼はうなずきました。そして私はその感じを内側で感じて、その全体について何か気づくことはないか見てみるよう提案しました。彼は内側を確かめて、およそ10~15秒後に「いや、僕は何も感じることができない」と言いました。
そこで、私たちはそこに座って、互いに相手とともにそこにいて、彼の支えの問題とともに居ながら、彼の身体にはまだ何も感じがないことに気づいたままでいました。これはプロセスにおける重要なひとときでした。そして、私の内なる声が「神様~。私はどうしたらよいのでしょう?」と言っていたにもかかわらず、ただ、彼が自分にはまだ身体の感じ(反応)がないことに気づいていたこと、そして、私の介入が早すぎたかもしれないことを、そのままシンプルに伝え返したのでした。
「ことばや気持ちや問題には色や動きで示せることがあります。自分自身の内側では、どんなかな・・・と確かめることに注意を向けてみるのもよいでしょう」といって、しばらく黙って待ちました。すると、彼は即座に言いました。「赤だ」。私は「はい。赤ね!」とその言葉と同じ力強いトーンで言いました。
「もしかしたら、その赤は紙にそれを描いてもらいたがっているかもしれないね。ちょっと自分の手に、そうしたいかどうか決めるよう、誘いかけてみましょう。手は、内側にどんな感じがあるかわかっていますよ」
rex's picture
レックスは赤いクレヨンをつかんで、小さな円を描きながら強く押しました。「それは繰り返し、繰り返し円の中をぐるぐる回っているんだ」と彼は言いました。彼が描いている間、私はもっと何か表現してもらいたがっているものがないかどうか、自分の内側で確かめてみるように誘いかけました。彼は少し間をとって、それから違うクレヨンを手にとって、その円を横切るような線を濃い青で描き、その先端に黄色くカールした線を描き、それを黒い線で囲みました。彼は驚きながら「それはこの黒い線の間に捕まえられちゃっているんだ」と言いました。私はそれを正確に伝え返し、彼に身体の内側でその感じを確かめてみるよう誘いかけました。彼はすぐに、それは胸のあたりにあると言って、手をちょうどその場所に置きました。そして、私は、そのプロセス全体の重要なところを伝え返しました。「ああ、何か支えを必要としていることがあって、それは何色かの色がついていて、特別な動きをしていて、線の間に捕まえられているように感じているのですね。そしてあなたはそれをあなたの胸のあたりで感じることができる・・・」「はい」、と彼はため息をつきながら言いました。

 「それは上下しています。・・・ボールみたいに・・・。いいえ、それはブーメランみたいといったほうがぴったりです・・・・ぼくの肋骨にぶつかりながら・・そこの場所でこれを持ち続けています・・・まるで牢屋みたいに。」 私は彼がこのことに感動しているのがわかりました。私は彼の言葉と非言語的な表現を伝え返して、そのまま黙っていました・・・彼が本当に自分自身の内側のこの部分をしっかり感じている間。そろそろ終わりの時間が近づいていたので、私は彼に自分の内側に、何かもっと必要なことがあるかどうか、彼と彼の胸のその部分はセッションを終わるとしたらどんなふうに終れそうか確かめてみるよう誘いかけました。・・・彼はまだ両手を胸に置いたままでした。最後に、私は彼に注意を内側に向けて、初めに出てきた問題(僕は本当に支えが必要なんだ!)のことをもう一度感じて、それが今はどんなか見てみるように勧めました。すると、彼は、すばらしいほほえみを顔に浮かべ、「これはほんと~~~~~うに、いいな~」と言いました。彼は、片手を胸の上に置いたまま、私と固い握手を交わして、さよならの挨拶をしました。(このセッションは全体でだいたい30分程度でした)。

背景と理論

 この事例には、「子どものフォーカシング」のエッセンスの多くのことが含まれています。子どもというものは、彼らがすでに知っているけれどもまだ言葉になっていないこと、自律ということや、身体で感じられることや、生きる体験の内にある「フェルトセンス」とのつながりを作って持っている能力があるのです。この能力は、暗在的で、注意を向けてもらうちょうどよいときを待っていることもあれば、少しだけ探索する必要があることもあります。「伝え返し」ということ~「ミラーリング」(鏡になること)と「ポージング」(間をとること)~は、私がとても大切にしている基本的な態度です。ガイドが、彼ら/彼女らの「フェルトセンス」に寄り添って、彼らとつながりを保ちながらいっしょにいるプロセスは、終わることなく展開するプロセスです。

 要するに、ガイドとして私は、ほとんど自分の「フェルトセンス」と一緒にいて、どうやって、いつ応答し、どんなときには介入しないようにするかを確かめています。私は、私の共感能力をそっと強めたり深めたりしながら、プロセスについての質問には注意して、言葉、態度、行動の背後にあるものに耳を傾けています。私は、常に新鮮に内側への問いに戻りながら、構造化することと、後からついていくことの間の「鬩ぎ合いの場」にとどまっていなければなりません:「今ここで、私はその子どものパーソナリティーの発達のプロセスに貢献しているだろうか・・・」あるいは、また、「私は今その子どものいるところに居て、その子どもとつながっているだろうか・・」。

 ガイドとして、私は何度も繰り返し、「私の言動は、その子どもにとって、~に反して、・・・に対して・・・、のために・・・、について・・・のどれなのだろう?」と自分自身に問いかけています。この態度のおかげで、私たちは子どもの近くに寄り添っていることができます。つまり、「このことはその子どもの“外側から内側に向かって”なのか、あるいは“内側から外側に向かって”なのか」と問うこと。目の前の子どもが持つ、暗在的な知恵を信頼し、それとつながっていることで、私は彼らをガイドすることができるのです。

ここで、ミラーリングの持つ多様な側面について述べたいと思います。それは、子どもが内なるプロセスを前に進めるときに、その子どもの信頼と勇気と安全で安心な感じを深めながら、つながりを築きます。ミラーリング/伝え返しは、子どもたちが言ったり語ったりすることを通じて、新鮮で驚くべき可能性、何か特別で新しいことが起こる可能性が彼らの身体を通じて表現されることを可能にします。ガイドによる特有のミラーリング/伝え返しは、ことばと行動の背後にあるものを感じるためのスペースを作ります。それは、多分ある微細な情緒的性質や、象徴化されるものがまだ意味を持っていないようなある新鮮な象徴化を感じるためのスペースなのです。何か新しいことがやってきて、それを判断することなく迎え入れたときに、ミラーリングにより、フェルトシフトをもたらし、また、視覚的な変容または発見をもたらすことができます。

 子どもの年齢に関係なく、両親、先生、セラピストが、この基本的な態度で接するとき、子どもたちがフェルトセンスを感じるためのスペースを簡単にすぐ作ることができます。子どもたちは彼らの深い内なる「正しい」という感覚を信頼し、それ自身の内に真実と意味のある身体の感じを信頼することを学びます。彼らは、生活の中で身体のフェルトセンスに耳を傾けることにより、それと深く関わるようになり、この感じにはある意味が、すなわち彼らが自分の問題と関わり、取り組めるようにするというお話が暗在していることを知るようになるのです。問題や、悲しみや、やっかいなことがらを否認したり、それらの中に引きこもるかわりに、自分自身でその困難、悲しみ、畏れ、怒りなどの感じを感じるに任せることができるのです。彼らは、問題あるいはそれについての身体のフェルトセンスを、絵を描いたり、色を塗ったり、彫刻のように形にしたりすることを通して、問題を自分の外側に置くことで、自分の内側にスペースを作ることができます。そうすることで、子どもたちは、~彼らが体験する状況において~、自分自身が自分の感じを理解することの中心となり、もっとよく集中し、他の子どものことばに共感的に耳を傾け、争いを解決することを学べるのです。

子どもの発達にフォーカシングはどう役立つか
子どもたちは(フォーカシングすることで)、自分とは何かということについてより感じやすくなり、自分の感情や、選択、また潜在的に必要としていることについて、他の子どもたちや大人と、よりうまくコミュニケーションがとれるようになります。彼らは、外界からの影響から、よりうまく自分を保護することができるようになり、また、彼ら自身の発達にとって、なにが正しく/良く/支持的か、あるいは間違いで/悪いことかを判断する、内なるレーダー(感知器)のようなものを開発することができます。彼らは、より冷静で、より自分の境界に触れたままとどまっていられるようになります。彼らは、自分の感じていることを、言葉だけでなく、他の多くの方法で表現することができます。また、彼らは多様な状況において、地に足のついた居方を身につけ、より大きな内なる安全(安心感)と、よりしっかりしたアイデンティティを育てることができます。

ルネについて
ルネ・フォーヘラルスは、オランダ在住で、日々すべての年齢の子どもたちにフォーカシング的なやり方で関わっていて、非言語的なコミュニケーションを得意としています。子どもたちのフォーカシングのトレーナー・コーディネーターとして、彼は、子どもたちと一緒に居る居方、ワークのやり方、また我々(大人たち)が自分自身のイキイキとした感じと接しながら、誠実さと遊び心をもって柔軟に思考したり、子どもたちに応答するにはどうしたらよいかということを、親、セラピスト、教師その他に教えています。

 子どもたちのフォーカシングやその講習会についての質問、または、自国でワークショップを持ちたいとお考えの方は、ルネに連絡をとるか、彼のウェブ・サイト(www.ftcz.nl)をご覧ください。子どもたちのフォーカシングについてより詳しく知りたい方は、フォーカシング・インスティチュートのホームページの中の特集「子どもコーナー」をご覧ください。(www.focusing.org/children

(訳:仁田公子)

 

ウイリアム・ヘルナンデスとの対話                サージ・プレンゲル

今月の対話は、間(ポーズ)を探求し始めることのお誘いです。
ウィリアムとの対話を聴くには、ここをクリックしてください。
Click to listen to the conversation with William
William Hernandez
「あなたは知っていると思わないで、ちょっと間をとって、自分は知らないという時をもちましょう。そうすることで(あるいはしないことで)、あなたは、あなたまるごと全体でその状況に反応することができるでしょう。」

今月の対話は、他と非常に異なります。どう違うかをお伝えするために、私は、「良い知らせと悪い知らせ」のフォーマットを使おうと思います。悪い知らせから始めましょう。他の対話よりもついていくのが難しいです。一つは技術的な理由で(他に比べて録音が明瞭でない)、一つは言語の壁を乗り越えるために多方面から通訳に訳してもらいました。

さて、良い知らせですが、これらの困難を超えて実際に対話を聴くことは本当に価値あることです。なぜなら、もう一つのアプローチについてですが、フォーカシングの精神に対してと同時に、身体的に新しい地平を開くことに対しても真実だからです。メアリー&ジーン・ジェンドリンは、過去数年、フェルトセンス能力の先駆けにとても興味をもっていたと言えるでしょうし、その発展に携わっていました。

それゆえ、これは単によくある対話ではありません。これは、フォーカシング・コミュニティにおける継続プロジェクトの始まりなのです。
(訳:大澤美枝子)

 

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