TFI Newsletter In Focus   イン・フォーカス   May 2013

まえがき(カイ・ネルソン)

フォーカシング・コミュニティのみなさん、こんにちは。

今号のニュースレターのテーマは、私たちが間を取ること(pause)が、非常に困難な状況からの回復にどう役立つのか、ということです。コミュニティ・ウェルネス・プログラムの目標は、傷付いたコミュニティにおいて、レジリエンス(回復力)を構築することです。文化を超えて、傷付いたコミュニティにフォーカシングを持ち込んだとき、私たちがこれまでにどんなワークについて何を学んだのかについて、この号でパトリシア・オミディアンとナイナ・ジョイ・ローレンスが概説しています。また、コミュニティ・ウェルネスについてベアトリス・ブレイクから手ほどきを受けたエル・サルバドルのトレーナー、ヤラ・ジミネツによる記事も載っています。彼女の記事は、ある特定の状況下においてコミュニティ・ウェルネスのワークがどのように映るのかということを取り上げています。

これらは全て、読む分には決定的に重要に思えても、私たちの多くが直面している現在の状況からは遠く隔たっているように思われます。しかしながら、私たちが極限状態に置かれたときには、これらの記事で語られていることは私たち1人1人にとって大切なことなのです。私自身、つい最近このことにあらためて気づきました。

2週間前、我が家の屋根が取り替え中のときに、私たちは激しい暴風雨に見舞われました。水が滝のように家に流れ込み、家の半分を流し去り、残った半分も相当傷んでしまいました。我が家に水のカーテンが流れ込むのを見るのはひどいショックでした。その後のことも大変でした。私はもはや住むことのできない半分残った家を出て、復旧のために必要な数えきれないほどのことをしました。

私はこのような非常に困難な状況において、フォーカシングがどんなに私の回復のために役立つかということに、はっきりと気づかされました。フォーカシングは、私が平静に戻ることができるように、私自身の揺るがされた部分と一緒にいるための術を与えてくれました。また、災害の最中にあっても人生の素晴らしさを見失わないように、私がその瞬間ごとの恵みをつかむのを手伝ってくれました。修理が終わるまでの6週間から8週間、この状態で暮さなければならないことについて考えるときには、私の圧倒された部分を慰めてくれました。何よりも、家の修理に関する提案に対して、いくつかの点で何か引っかかるものを感じていたとき、フォーカシングは、私が間を取り、自分自身の感じられた知恵(felt knowing)を聴くことができるように助けてくれました。

この号を、遠く離れた場所で起こっているフォーカシングの1つの利用法として読むだけでなく、あなた自身が人生の極限状況に置かれたとき、回復力の促進を必要とするような場面でとても役に立つものとして読むことをおすすめします。この困難な時代において、私たち多くの人間にとって、これはまさに「今」であり、「ここ」なのです。

それでは、また次号で。
カイ(TFI共同ディレクター)

 

7月号の目次
*まえがき(カイ・ネルソン)
*コミュニティ・ウェルネス・フォーカシングの最新情報 フォーカシング・アプローチがどのように子どもの内なる声を明らかにするのか(ナイナ・ジョイ・ローレンス、パトリシア・オミディアン)
*エル・サルバドルでのフォーカシング:癒しのツール (ヤラ・ジミネツ)
* 今後のイベント
* 特別なイベント
* 新しい情報
* リストにご参加ください
* 普遍的なフェルトセンス・リテラシー(読み書き能力)を支援しましょう


コミュニティ・ウェルネス・フォーカシングの最新情報

フォーカシング・アプローチがどのように子どもの内なる声を明らかにするのか
(ナイナ・ジョイ・ローレンス、パトリシア・オミディアン)

“始め、アフガニスタンではストレス、正常発達、回復性などの心理社会的理解が必要とされました。…私たちは、人間がいかに深いかということに気づき、もっとフォーカシングの技術を必要とするようになりました。”

私たちは、2001年にアフガンで仕事を始めて以来、異文化でフォーカシングをシェアすることについて多くのことを学びました。そこで私たちは、ユージン・ジェンドリンのフォーカシングの理論やアン・ワイザー・コーネルのレッスン・プランと、アフガンにもともとあった、フォーカシングと似た感じのもの――ジュラルディン・ルミのゲストハウス・ポエムとを結び付けました。実験はとてもうまくいきました。私たちは、フォーカシングが新たな文化圏へと広がるためには、フォーカシングを表すその地域の言葉(メタファー)を見つけることが大切だと考えました。そうすることで、フォーカシングが元からその地域に属していたかのように受け入れられるのです。

 

コミュニティの需要を満たす方法を共につくる

他のフォーカサーたちが私たちのモデルを使おうと試みたとき、私たちはみんな、よいメタファーを見つけること以上に大きな成功の原因があったことに気づき始めました。アフガニスタンでフォーカシングがコミュニティに広がったのは、彼らの役に立つだろうと私たちが考えるものを提供するのではなく、コミュニティが必要とすることに私たちが応えていたからでもあったのです。

私たちはベアトリス・ブレイクにとても感謝しています。彼女は私たちがそのことをより明確に理解する手助けをしてくれました。彼女は勇敢にも、アフガンのモデルをエル・サルバドルで取り入れ、ゲストハウス・ポエムを含むすばらしいレッスン・プランを開発しました。ところが、アフガニスタンではとても意味深いことが、エル・サルバドルでは何だか馬鹿げたものになってしまったので、彼女はよいフォーカサーがする「あのこと」をしました。つまり、彼女は間を取り、そしてエル・サルバドルの人々の声に本当の意味で耳を傾けたのです。彼女は、彼らが暴力の減少を望んでいることを知りました。彼女はノンバイオレントコミュニケーション(非暴力コミュニケーション)の技法から始めて、それをいくつかのフォーカシング技法と組み合わせました。それは見事に成功したのです!

私たちは今では、フォーカシングがアフガニスタンでも同じようなプロセスで広まったのだと理解しています。エイド・ワーカー(慈善団体などで働く人)たちは言いました。「私たちは傷つき、戦争によって気が狂いそうです。助けてください!」 だから私たちは彼らのニーズに応え、ストレスを扱うための心理社会的な情報や戦略の提供から始めました。同時に私たちはアフガンの家族においての普通の社会的・心理学的健康について調べ、傾向(sign)を見出し、アフガンの回復のためのブロックを積み上げていきました。彼らのゲストハウスのメタファーを用いたフォーカシングは、このようにしてストレスに直面した彼らの回復のためのニーズに対する答となり得たのです。

 

フォーカシング――それ自体は目的ではなく

私たちは、コミュニティ・ウェルネス・フォーカシングがフォーカシングを広めるためにフォーカシングを教えるものではないことに気づきました。コミュニティには、ほんの小さなフォーカシングのかけらを含ませた他の技術によって満たされる緊急の需要があるのです。私たちはコミュニティを援助し、彼らの需要を満たすことに、より高い関心を持っています。もし、ほんの小さなフォーカシングの技法のかけらで今求められている援助を全て提供できるなら、私たちはそれで満足です。そして人々がそれ以上のものを求めるときは、私たちはより多くのことを分かち合う準備ができているのです。

アンナ・ウィルマンは、著書『Creating Confidence: How To Do Social Work Without Destroying Souls(信頼をつくる:魂を壊すことなくソーシャルワークを行うには)』の中で、オレゴン州ローズバーグのコンフィデンス・クリニックが、社会サービスを求める人々と少数の異端のソーシャルワーカーたちによって、共につくり上げられた過程について述べています。彼女は、そのクリニックに参加し始めたころ、クライエントのニーズに応えるために、いくつかのフォーカシングのかけらを使い始めました。それは、たとえば、あらゆるグループワークにおいて女性たちにお互いの話を聴くことを教えるときのような、フォーカシング的態度などです。

エクアドルのウィリアム・ヘルナンデスは、フォーカシングの小さな一部分である「間をとること(the Pause)」を、彼がどのように教えているのか、ということについて示しています。彼が教えているのは本当にフォーカシングか、という疑問を持つフォーカサーもいました。私たちがゲストハウス・ポエムを使うことについても、最初は同じ反応をされました。アンナのコンフィデンス・クリニック、ウィリアムのNGO、そして私たちのアフガンのプログラムが行っていることは、小さなことから始めて、必要に応じて小さなフォーカシングの技法を付け加えるということです。ゲストハウス・ポエムは、内側で起こるあらゆることに対して共感的な態度を持つ、というフォーカシング的態度についても触れています。「間をとること(the Pause)」は、人々が自分の内側に何かがあるということに気づくのに役立ちます。リスニングの訓練は、人々が自分の内的プロセスと共に在り、また他者とパートナーになることを助けます。

私たちがワークを行ったアフガンについて、パットは次のように述べています。「フォーカシングをすることでやっと夜眠れるようになった、と話してくれた人々を、私は覚えています。その後、彼らは自由な注意力を持ち、そして気づきました。『私は主張しすぎる。このことにフォーカシングが役に立つだろうか?』 それからすぐに、『私は子供の頃に起こったあることを思い出した。いま私が持っているそれについての感じを扱うために、私は何かできるだろうか?』 人々はまさに小さなかけらを受け取り、そしてもっと深いところへと赴く必要を感じて、より多くを求めたのです。」アフガニスタンの人々は、初めにストレスや正常発達、レジリエンス(回復性)についての心理・社会的な理解を必要としました。その後彼らは、もっと個人的な課題に役立つ何かが必要だという考えに至りました。彼らは、人間というものがどれだけ深いかということを、より強く感じるようになっていき、そしてもっと多くのフォーカシングの技法を求めたのです。

 

フォーカシングの内側から支える

コミュニティの外から定期的に教えに来るような場合、活きたコミュニティ・ウェルネス・プログラムを作り上げることは困難です。フォーカシングと他の解決策を組み合わせて効果的にコミュニティのニーズに応えるために、私たちはある種のチームを編成しました。フォーカシングとコミュニティのニーズに対する他の対応策の融合を図るべく、チームはフォーカシングのワークに精通したコミュニティ外からのサポートメンバーが最低1人と、コミュニティ内のメンバー(1人かそれ以上)で構成されました。メンバーは「サムシング・アンド・フォーカシング(何かとフォーカシングの組み合わせ)」を創造し、それを使い始め、好きになり、そしてそれを分かち合いたいと思うようになりました。ベアトリス・ブレイクは、エル・サルバドルに教えに行って、このことに気づきました。多くの人々が「ノンバイオレントコミュニケーションとフォーカシング」を体験し、そしてついに、ある熱心な母娘が現れました。それがメルバ・ジミネツとヤラ・ジミネツでした。彼女たちは、エル・サルバドルでトレーニングを続けるためのNGO(非政府組織)「Nuevos Rumbos」をベアトリス・ブレイクとともに立ち上げたのです。

イギリスのジェリー・コンウェイは、ガザ・プロジェクトの前身となるものの立ち上げに貢献しました。モハメド・アルタウィルは戦争で傷ついたガザの子供たちや家族とともにワークを行うにあたって、より治療的な方法を求めていました。そこで彼らは心理・社会的ウェルネスとフォーカシングをジェリーから教わったのちに、メアリー・ジェニングスやサイモン・キルナーらとともに支援チームを作りました。チームはいくつかの基金を設立し、少しずつ歩みを進め、ガザのパレスチナ・トラウマ・センターで働く人々のための2回目のワークを行う旅を実現しました。彼らは心理・社会的ウェルネス、フォーカシング、そして家族療法を結びつけました。

ニューヨークのロリ・ケトヴァーは、数年間にわたって子供たちと十代のためのプロジェクトを行っています。彼女が地方の図書館で開催しているのは、絵や文筆とフォーカシングを組み合わせた子供たちのためのグループです。彼女は地域の十代の若者を募って子供たちのグループを手伝う支援チームを作りました。まさに「内なる仕事(inner job)」です! いま、その十代の若者たちは彼らのプロジェクトと広いフォーカシングのネットワークとのつながりに関心を向けている、と彼女は言います。

 

基金

コミュニティ・ウェルネス・プロジェクトへの資金援助については、まずは小さな時間的・金銭的援助に始まり、そのプロジェクトが既に資金提供を受けている既存のプロジェクトとうまく適合したときに大きく広がっていくものである、ということがわかってきました。私たちは気づきました。プロジェクトが発展の時期を迎え、公的な資金援助が必要になったときには、たとえば「サムシング・アンド・フォーカシング」に注目するなど、資金提供者側の言葉を用い、資金提供者側の立場に立った目標を示すということが前進のための道なのです。2004年のディスカッションで、メアリーは、もしも私たちが全てのワークを相手の言葉で行った場合、フォーカシングがもたらした成功は記録に残らず、その後のプロジェクトでフォーカシングをウェルネスや癒しのためのツールとして用いることの重要性がなくなるということを指摘しました。つまり、どのようにワークを提供するか、そのバランスが大切なのです。例を挙げましょう。「フォーカシング」のプロジェクトに資金を提供する公的機関は少ないでしょう。しかし、アフガニスタンでは、DV被害者の女性たちの心理学的なニーズに応えるためのプロジェクトに、国連の機関が資金を提供したのです。そのツールは心理・社会的ウェルネスとフォーカシングを含むものでした。資金提供者へのアプローチは、フォーカシングがワークの中心にあるという理解に基づいた上で、彼らの視点に立って行われたのです。資金提供国の機関と共同でワークを行う際には、主に使用される技法の1つとしてフォーカシングが含まれていることが重要だということに私たちは気づきました。

 

異なる職種を尊重すること

もう1つ重要なことが分かりました。私たちはフォーカシング志向のセラピストやフォーカシングをプログラムに取り入れている大学教授、またその他にもフォーカシングを提供するたくさんの方法を必要としているのです。私たちはコミュニティ・ウェルネスが発展のための唯一の道だとか、ベストの方法だなどと暗に言いたいのではありません。コミュニティ・ウェルネスが他の方法に取って代わることはできないのです。

私たちは、公衆衛生の3段階のケアの考え方が好きです。第1段階は社会に広く継続的に提供される基本的な情報です。たとえば、病気の拡散を防ぐために手洗いを推奨するようなことです。第2段階は、病気の外来患者ひとりひとりに対して、医師や精神保健の専門家によって提供されます。そして第3段階は、非常に状態の悪い少数の人々のための、入院によるケアです。パットは、ある素晴らしいアフガニスタンのコミュニティ・トレーナーを覚えています。そのトレーナーは50名の女性のグループの中で、本当にセラピーを必要としている2~3名を、そしておそらくは精神科医による精神疾患の薬の処方が必要だと思われる1名の女性を見出すことができました。残りの女性たちは、コミュニティにおける心理・社会的な情報とフォーカシングの組み合わせで救われました。

各段階のケアそれぞれに価値があり、それぞれの段階ごとに異なる専門家が必要なのです。ある人にとって、私たちよりもセラピストのほうが必要だと思われる場合、その人をセラピストのもとへ送ることができるのは喜ばしいことです。私たちは、ワークを行うときにいつも私たち自身の内側に注意を向けています。内側から出てくる私の次の一歩はどちらに向かっているのだろうか? 私の中の何かが、この広がるような感じのことをしようよ、と私に呼びかけているのだろうか? もしも私の内側が、ある人のそばに座って深いセラピーを行うことを強く求めているようだとしたら、それはこの世界が求めていることでもあるのです!

 

すぐに分かち合うことの勧め

コミュニティ・ウェルネス・フォーカシングで、私たちはいつも参加型のトレーニング法を用いたり、新しく覚えたことをすぐにやってみるような宿題を出したりします。これは常に効果的なアプローチだということが分かりました。アイルランドのメアリー・ジェニングスは、子どもたちのフォーカシングプロジェクトを始めたとき、子どもたちとワークを行う大人たちにフォーカシングを教えるのを手伝ってくれる地元の認定フォーカシング・トレーナーを探しました。そして彼女は気づきました。その当時、地元の認定フォーカシング・トレーナーの多くは積極的にフォーカシングを教えるということをしていなかったのです。

あるワークショップでウィリアム・ヘルナンデスが私たちに言いました。彼の運営する支援団体FECDでは、フォーカシングの資格を強調しないそうです。なぜなら、彼が人々に一生懸命になってほしいことは、紙切れを手に入れることではなく、フォーカシングを人生の一部とし、それを他の人と分かち合うことだからです。彼のYou Tubeの動画には次のようなタイトルが付けられています。『一方向的な教師‐生徒パラダイムの破壊 ――ともに活動し、ともに学ぶために――』

1992年、アルゼンチンのエレナ・フレッツァは、自分がまだ初心者フォーカサーであるように感じていましたが、それでもフォーカシングを教えることを始めました。彼女はトレーニングセンターを立ち上げ、そして教育省にプレゼンテーションを行うために、フォーカシングの最初の2つのレベルを含む教育計画を作成しました。のちにフォーカシングの国際会議で、エレナが次のように報告したことを、私は覚えています。「ティーチャーズ・アソシエーション(フォーカシング指導者の協会)は、そのプログラムでの指導者たちの経験をもとに本を出版し、彼らの学びを分かち合うことを始めました。」

私たちは、学んだ人に、すぐに教えるように推奨しています。それと同時に、フォーカシングを教えるためのすばらしい方法を見つけ出すため、長年にわたって一生懸命働くすばらしい認定トレーナーたちがいるということを、私たちはうれしく思います! フォーカシングを分かち合い、また他のアプローチと組み合わせて私たちのコミュニティを助けるに当たって、フォーカシングを完璧に極めるまで待つ必要はないのです。


エル・サルバドルでのフォーカシング:癒しのツール 
(ヤラ・ジミネツ)

エル・サルバドルを12年間にわたって苦しめた内戦に関連するいくつかの体験は、私の中に傷を残しました。私は何年もの間、その傷を癒す方法を探していました。
人生は、私をフォーカシングへと導きました。2009年にベアトリス・ブレイクのもとでトレーニングを始めて以来、私は学んだことをシェアしなければならないという強い思いに駆られました。時がたつにつれて気づいたのですが、私は、物事に対処する術をあまり持っていないコミュニティの女性たちと、彼女たちの傷を癒す方法について分かち合いたいと思っていたのです。

2010年に、私は母と共に国内のコミュニティ・グループ向けにフォーカシングとノンバイオレントコミュニケーション(非暴力コミュニケーション)の入門ワークショップを始めました。それ以来、私は着実に経験を積み重ねています。

私たちは、戦争によって深刻な影響を受け、現在は極度の貧困の中にあるコミュニティで仕事をしています。国際的なフォーカシング・コミュニティの絆のおかげで、私たちのレジリエンス・サークル(回復サークル)は女性や子ども、若者を無償で救うことが出来ています。

 

誰が教え、誰が学んでいるのか?

コミュニティのグループとともにワークを行い、私は大切なことを2つ学びました。1つは、「個々のプロセスを尊重しなければならない」というフォーカシングの基本原則を、私たちは簡単に忘れてしまうということです。

ある日、ブエン・パスター(Buen Pastor)と呼ばれるコミュニティのグループとのセッションを終えた後で、私は気が付きました。私は女性たちに対して、彼女たちが持っていない何かを、昔からよくある先生と生徒の形式に従って与えたがっている、という感じがしたのです。

私は、私の内側からの小さな声に耳を傾けました。「ここでは、誰が教え、誰が学んでいるのだろう?」そして私は気づきました。私はすべてのクラスにおいて、事前に作り上げたプラン通りに教えようとしていましたが、当然のことながら女性たちはそれぞれ全く異なる経験を持っていて、学びのリズムも全く異なるのです。私はしばらくの間フェルトセンスとともにいることにしました。そして私に新たな考えを与えてくれる私の部分を見つけました。そこから少しずつ変化が起こってくるのを、私は感じとることができました。そして私は思い出すことができました。私の仕事は、彼女たちが自分自身へと通じる道を見つけられるように、ただ空間を提供することだったのです。

それだけではありません。私は私自身にも同じことをしてきたのだということが分かったのです! 私は目標にたどり着くために設定した厳密なプランに従おうとしていました。驚いたことに、私たちの「在り様」というものは、人生における他の活動の場面にも反映されるのです! 

フォーカシングは、私がそうした微かなものに気づき、人生を根本から変えるための鍵を与えてくれています。私がこのように変わっていくことが、私の周りの人々にとって、自分たちも変わりたいという想いを持つためのきっかけとなることを、私は願っています。

 

内なる道

2つ目の学びは、人はそれぞれ自分だけの答を持っていて、私たちがしばらくの間、自分自身とともにいれば、体が私たちに語りかけてくる、ということです。ブエン・パスターで、私たちはあるエクササイズを行いました。それはオランダで子どものフォーカシングのワークを行っているハリエット・テーウから学んだものでした。このエクササイズは体と感覚とをつなぐのに役立ちます。女性たちは、体の絵を描くように教示されます。そして何か感じられるものがあったときは、その感じを、色を用いて絵に描き加えるのです。私がこのエクササイズを使うことに決めたのは、体とつながるための簡単で楽しい、効果的な方法であるように思われたからです。しかもそれは、私たちが内的な作業をするための準備に役立ちます。

中には、体験を絵で表現するのを嫌がる女性たちもいました。私はそれを不満に思い、悲しくなりました。でも私は何が起こるのかを理解するためにエクササイズを続けました。そして最後に私はその女性たちに、何か分かち合いたいことはないかと尋ねました。予期せぬ答えに、私は驚いてしまいました。その女性たちの一人が、話をしたいと言いました。彼女が言うには、何かを感じるために、園芸、育児、あるいは夫の世話など、やるべき全てのことをストップするための時間と場所を持った経験がほとんどなく、彼女にとってそのエクササイズは難しいとのことでした。他にも、もう一度子どもになったみたいで気持ちが悪いという女性もいました。

そうしたことを全て聞いた後、それぞれが言ったことのいくつかを伝え返しました。ひとりひとりが、それぞれのやり方で何かに気づいたことは明らかでした。また、自分たちがあまりにも責任や生活の波に飲まれ過ぎていて、普段はこういうことをしていなかったんだなあ、ということにも気づきました。彼女たちは、自分自身の内なる世界への小さな道を、自身の中に見つけたようでした。驚いたことに、ただ自分の感じに注意を向けるだけで、彼女たちは、たとえ絵には表現されなかったとしても自分の心の中に明らかに存在している、かすかな感じや色に気づいていたのです。

その後、小さな発見や気づきによって、彼女たちの生活は根本的に変わっていきました。女性たちの1人は、「疲れたから、しばらくの間ハンモックにこしかけて、水を飲みました。」と言いました。また、別の女性は、熱があるのに市場に行かなければならなかったときのことを話しました。彼女は自分自身に、しばらくの間休んで、そして代わりの方法をさがすという贈り物をしました。このような話を聞いて、私は彼女たちの変化がわかりました。これらのことは、もともと私たちが当然やっている小さなことのように思われるかもしれません。ですが、家族を支えなければならない重圧を抱えた女性たちにとって、休むことは選択肢の中に無いものなのです。私から見れば、これは彼女たちが自身の人生を生きていく方法における重要な変化なのです。

 

行動のなかでのフォーカシング

グループを続けていく中で、女性たちはこの内なる道の使い方をどんどん学びつつあります。

たとえば数週間前、私の母メルバが7人の女性たちにクリアリング・ア・スペースを教えていたときのことです。彼女たちがペアに分かれたちょうどそのとき、そこで託児の手伝いをしていた私の兄が駆け込んできて、男の子が頭から落ちて血を流していると告げました。内戦のとき医療に従事していたメルバはその子のところへ行って傷を確認し、母親を呼びました。私はその親子を車に乗せ、アグイラレスの病院へと向かいました。

女性たちは明らかに動揺し、男の子を心配していました。私たちが病院に行っている間、メルバは女性たちに、深呼吸をし、自分の内側へと入るように促しました。内側で感じられる全てのもののために場所を作り、それらに寄り添い、そして次にやって来る何かに対して開かれているようにと、メルバは女性たちを導きました。女性たちは、次のように述べています。

「恐怖とともにいることが、私を落ち着かせてくれました。」
「私はとても不安でした。私は、この不安感がまったく別の昔の恐怖とつながっていることに気づきました。」
「私の内側がぐちゃぐちゃにかきまぜられたような感じでした。私は恐怖に寄り添うことで、ずっと楽な感じになりました。」
「私たちが感じるものと一緒にいることは、とても癒されます。もし私たちがそれを扱わなかったら、それは私たちの心と体を蝕んでしまうかもしれません」
「恐怖とともにいることで楽になりました。このツールは私たちを助けてくれます。私たちの内側で起こっていることに注意を向けなければ、私たちは気が狂ってしまうかもしれませんから。」

彼らはフォーカシングで緊急事態への対処を試み、そして成功したのです!

男の子は2、3針縫って、無事に病院から戻ってきました。私たちがその村で危機的状況に対応したのは、これが初めてではありません。フォーカシングとリスニングを教えることで、私たちはコミュニティ全体の意思のようなものに触れることができます。そして私たちは、私たちのできることでそれに応えるのです。

 

結束がそれを起こす

私が学ぶことができたのは、エル・サルバドルでのベアトリスの努力とワークのおかげであり、また昨年9月にニューヨークのガリソン・インスティチュートで行われた「Advanced and Certification Weeklong(認定トレーナー研修)」のための「ジャネット・クライン奨学金」を支給してくださった、フォーカシング・インスティチュートのおかげです。そうして私は学びを深め、フォーカシングのコミュニティを知り、ベアトリスと私の母、私とがエル・サルバドルのコミュニティで行ってきた仕事に価値を感じることができたのです。

私たちは、女性たちだけでなく子どもや若者に対してワークを行う方法を少しずつ見つけつつあります。そのため、オランダで子どものフォーカシングを行っているレネ・ヴォーゲラーとハリエット・テーウは、2013年7月の14日から20日までフリースラントで開かれるトレーニングに、エル・サルバドルのフォーカサーを1人か2人招待するための基金を立ち上げようとしています。これに協力したいと思われる方は、ユーロでの寄付をお願いします。

国際フォーカシング・コミュニティのサポートのおかげで、私たちはフォーカシングの恵みを分かち合うという夢を実現できています。みなさんの結束によって、私たちは、こういう支援がなければフォーカシングに出会うことが無かったであろう人々に、無償でフォーカシングを提供できているのです。

私たちのエル・サルバドルでのワークを継続するためには、みなさんの寄付が必要です。どうか、TFIを通じての寄付をお願いします。この寄付は税金の控除が受けられます。もしペイパルを利用される場合は、URLは下記のとおりです。
http://www.gofundme.com/Focusing-El-Salvador
心から感謝します!

英訳:ベアトリス・ブレイク

(日本語訳:玉澤 秀寿)

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